北海道旭川市への帰省中、幌加内の政和で開催していた”政和アートFes 2017”へ行ってきたので、早速記事にしておきたい。
幌加内市街から国道275号を北上すること約15km、深名線政和駅を中心に市街を形成した政和地区があり、ここに政和小学校はあった。平成7年(1995年)深名線が廃止されて過疎化が進み、それから12年後の平成19年(2007年)に政和の児童が集った政和小学校も閉校に。他の例を見れば校舎は解体され、体育館だけが残って再利用されたり、悲しいかな跡地は野ざらしとなっているような光景も北海道の過疎地域ではよく見られるなか、政和小学校は往時の姿をそのまま残している。「人が住まなくなった家は朽ちる」、今年6月に訪れた長崎県池島の炭鉱アパートに朽ち果てる有様を見てきただけに、校舎も使われなければ見る見るうちに朽ち果ててゆくことは想像に難くない。
そんな母校を守るべく立ち上がったのが卒業生、思い出の校舎を残そうと平成24年(2012年)から”政和アートFes”と銘打ち、夏期に旧校舎を利用して道内アーティストの作品を展示する。今年(2017年)で6年目になるという。旧小学校の校舎や備品に遊び心いっぱいの作品がコラボして展示され、美術館等では味わえない独特の世界観を醸し出している。今年(2017年)の開催期間は7月29日(土)~9月3日(日)まで、8月26日(土)と27日(日)の2日間はワークショップや手作り雑貨の店が出るとのことで、期間中に最も賑わうようだ。夏場の幌加内は広大なソバ畑に花が咲き誇り、深緑の山々を背景にして白い絨毯が映える季節、北海道へ旅行やドライブの際に幌加内を行き先に加えてみてはいかが。
政和アートFeshttp://seiwa-artfes.moo.jp/

幾度となく訪れた旧政和駅舎。まだまだ健在。

旧政和駅前。数年前に幌加内町開基七十周年の記念塔が失われたものの、駅前の様子は変わりない。

旧政和駅前を通る国道275号。路傍には花壇が設けられ政和の町を綺麗に彩る。

国道沿道には”政和アートフェス”の幟がはためく。

旧政和小学校に。平成6年(1994年)建立の「政和開基開校八〇周年記念」碑。碑面に80周年を祝う詩を刻む。
東に雨竜川を眺め 西に三頭山を仰ぐ ふるさと政和うるわし

今も元気に遊ぶ子供たちの声が聞こえてきそうな旧政和小学校校舎。

旧校舎前。左から二宮金次郎像、政和中学校閉校記念之碑、政和小学校閉校記念之碑。

平成19年(2007年)に閉校となった旧政和小学校。閉校時に飾れたのだろう、”ありがとう 政和小 さようなら”を掲げる。そう簡単に”さようなら”なんててきません。ここが”政和アートFes”の会場である。

まずは体育館に。

壇上には新聞紙で作られたニワトリ。

壇上の背景にある金属アート。二次元から三次元へと作品を融合し、球をコロコロさせて遊べる仕組みになっている。発想が面白くて、こういうの大好きなのでコロコロさせてみた。最後の吊るしミニ鍋の手前で、球が脱落してしまったのもご愛敬。

グランドピアノの周りに配される金属の球体形オブジェは聴衆のうよう、まるで演奏会が開かれているようだ。


体育館演壇向かいの中二階。歴代校長先生の顔写真や閉校式典に使われた「思い出ありがとう 政和小学校」の看板をはじめ、在校生の絵画等の作品が残されていて、感慨深く見入ってしまう。

校舎2階の理科室入口。壁床の赤・黄・青の配色に白の階段、無味な金属アートが壁から天井にかけて蔦の如くへばりつく。実に楽しい。

理科室には天井から吊るされた作品が、氷点下数十度に達する幌加内の厳しい冬を思わせる。それを裸電球が照らすのは、深い曇天の合間から見える太陽の光、僅かな温もりに春の到来を待つ北海道の住人を感じてしまったのは大袈裟なのか。

理科室の棚には、政和小の生徒たちが実験で使ったのであろう器材を残す。

ここは書庫。「天色の地」という作品。白イスに座り、そして思いを馳せる…。

教室では石油ストーブで暖をとっているかのように作品が展示され、素敵な空間に。

黒板アートを制作中だった図書室。

黒板アートが完成したところを見れるかなと思い、3日後に再訪。これが絶滅危惧種をテーマにした黒板アート。まだデッサンだけの部分があり未完成、しかしながら十分に作品を堪能できた。完成は8月27日を予定しているという。チョークだけでこれだけの表現ができることに感動。特に地上と水中を隔てる水面の表現が素晴らしく、しばらく間近で見入ってしまう。

制作者は学校の先生で、休日に士別からここに来て黒板アートを描いているのだとか。チョークの扱いには慣れているのだろうが、作品は緻密に描かれていて凄いの一言。思いが伝わってくる。

図書室だけに本棚には本がたくさん並ぶ。

1・2年教室は不思議な空間に。

異彩を放つこんな作品も。ウエディングドレスに挟まれるのは政和アートフェスのキャラ、ワルジカ。新聞紙で作られている。ここで何の悪巧みをしているのでしょうか。

ここは物品庫。色彩の無い空間に冷徹な幌加内の真冬を思わせる。

そして”アトリエ千の花”。ステンドグラスを照らす暖かい光。真冬は極寒となる幌加内、これは命を守る灯り。

ステンドグラスが飾られた窓越しにソバ畑を眺める。今はソバの花が咲き誇る幌加内の短い夏。

旧政和小学校の2階廊下。

来年も必ず来よう。夏が来るのが楽しみだ。

政和から旭川への帰途、白銀の丘に。

道の両側に満開の白い花を咲かせる。これが美味しい蕎麦になるわけだ。

この記事の最後は水銀山より望む幌加内市街で。
撮影日:2017年8月10日(木)、13日(日)
テーマ : 北海道
ジャンル : 旅行