官女皎月の伝説を訪ねて

小田井宿を出ると地名は御代田町から佐久市に変わり、小田井下宿の静かな町並みの中を歩く。途中、小林製菓という店が「あめのこばやし」と書かれたいかにも老舗な看板を掲げているのだが、今日は定休日なのか、それとも既に店を閉めてしまったのか、引き戸もカーテンも閉じられている。

小田井南交差点で県道に合流すると、中古車店や車のディーラー店が並ぶ中に一際目立つ立派な松が見えてくる。この辺り一帯は皎月原(こうげつはら)と呼ばれる名勝地で、かつては浅間山を背景に広大な草原が広がっていたという。用明天皇の586年に皎月という官女が、お咎めを受けてこの地に流されてきたことが地名の由来だ。白馬を愛した皎月は、しばしば馬に乗ってこの草原を訪れ、後世に様々な伝説を残す。現在は郊外型の店が連なり、県道沿いの一角に公園としてその面影をとどめているのみである。

ほっかほっか亭の先、市川整体療術院裏手の雑木林に、ひっそりと鵜縄沢(うなわざわ)一里塚の東塚だけが現存している。中山道開通時に設置されたものであるが、寛永期の改修で街道から外れてしまった。おかげで現在の県道敷設の際にも破壊を免れた。林の中には旧道の古い道筋も少しだけ残り、かつての姿を示す貴重なものである。日本橋から42里目(約165km)の一里塚で、数からすると38番目。この先しばらく県道を歩くことになる。
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