野に咲く花のように

浅間山は右後方に随分と遠のいた。旧中山道はブロックに川筋を守られた濁川を渡る。その名の由来なのだろうか、水量の減った川には茶褐色の泥がむき出しになっている。すぐ先、右手民家の裏には荘山稲荷神社が鎮座する。この辺りの街道両脇に平塚の一里塚があったというが、今はその痕跡すら窺い知ることはできない。日本橋から43里目(約169km)の一里塚で、数からすると39番目。

平塚集落に入り、ひとまず店の軒先で休憩。木造の店構えと「TOBACCO」のレトロな看板が何ともいい味を出している。雲がたちこめていた空も、いつのまにか大部分が青空の晴天となり、和宮様のように野点とはいかないが、缶コーヒーを飲みながら一服する。集落を出ると再び田園風景が続き、カエルの鳴き声が耳に心地よい。
野に咲く花のように風に吹かれて 野に咲く花のように人をさわやかにして♪
そんな風に僕たちも生きて行けたら素晴らしい 時には暗い人生もトンネル抜ければ夏の海♪
そんなときこそ野の花の けなげな心を知るのです♪

思わず鼻歌まじりにダ・カーポの名曲が口につく。路傍には春の到来を待ちわびたタンポポが地味ながらも黄色い花を咲かせ、田植えを終えたばかりの水田と新緑の山々は実に清々しい。そんな信州のさわやかな風の中に身を置くと、一足も二足も先に裸の大将が歩いているような気になってくる。そんなことを思いつつ、やがて根々井塚原集落の古い町並みの中を歩いていく。

妙楽寺を過ぎると道はY字路にさしかかる。分岐点には「旧中山道 岩村田宿⇔塩名田宿」の看板が立っているので、ここは左へ進路をとり下塚原集落の中を抜けていく。そして再び先ほど分かれた道に合流すると、騎乗の男女二神像を祀る重要文化財の駒形神社が現れ、ここから濁川に沿って谷間の道を進むことになる。
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