土砂降りの雨の中で


宿場西はずれにある大伴神社に寄る。社殿の前には様々な願いが込められた絵馬が奉納され、表面には望月の駒と双体道祖神が描かれている。いかにも望月の地らしい、微笑ましい絵馬だ。そんな絵馬を眺めていると、ポツリポツリと顔に当たる滴が気にはなってくる。それも束の間、滴の量は増えはじめ、雨となって強さを増し始める。億劫ではあったが傘を差して神社を後にし、宿場を抜けて旧中山道をひた歩く。

御桐谷(おとや)という難読の名を持つ交差点を過ぎると、道なりに坂を上っていく。佐久良荘前停留所まで来たところで、何気なく異変に気づく。どうやら旧中山道の道筋から外れてしまったらしい。ガイドブックを確認すると、旧道の道筋は交差点を渡ってすぐに左の段丘を上って行くようだ。標識も無く、非常にわかりにくいので注意が必要だ。足取りを反転させ段丘を上がると、Z字状の坂道を持つ青木坂にさしかかる。途中、寒念仏供養塔を見ながら坂を上りきると、国道142号の下を潜り抜ける。右に国道の陸橋、青木橋を見たところで、道幅2m程の旧道は県道となって対向2車線の道となる。

本牧小学校前信号の先で御巡見道標を見て、県道右脇に施された広い歩道を歩く。すると観音寺入口停留所付近まで来たところで、にわか雨に見舞われる。土砂降りの様相となってきた雨は、激しく路面を叩きつけ、既に傘が意味を為していない。幸い停留所が小屋付きだったので、ずぶ濡れになりながらも駆け足で避難する。そこで頭上を覆うダークグレーの雲を眺めながら、ふと何故こういう激しい雨のことを土砂降りと言うのだろう・・・何てどうでもいいことを考える。土砂が降ったかのように、激しい音をたてるからなのか・・・上手い表現を考えたものだ、と勝手に解釈して悦に浸っていると、やがて雨は小降りとなってくる。

ようやく重い腰を上げて再び歩きはじめる。停留所のすぐ先には「旧中山道 茂田井宿」の道路標識が頭上に掲げられ、程なくして右手木々の合間に池が見えてくる。この池の名は濁池というのだが、その名から受ける印象とは裏腹に、エメラルドグリーンに色づく水は美しい。そして「中山道茂田井入口の案内板から旧道は県道を離れ、下り坂の先に視界が開けてくると、間もなく茂田井の町へと入っていく。
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