幌加駅跡(士幌線) ~市街発展のきっかけは洞爺丸台風~
糠平駅が士幌線の終着駅として開業してから2年後の昭和14年(1939)、士幌線は十勝三股駅まで延伸開通し、その途中の一般駅として幌加駅が設けられた。同22年(1947)駅北側に上士幌営林署の貯木場が設けられ専用線を敷設、開業当初から十数年は木材搬出や営林署職員の足として機能していたようだ。
転換点を迎えたのは昭和29年(1954)9月に北海道で猛威を振るった台風15号、函館湾で洞爺丸をはじめ青函連絡船5隻が沈没し、乗客乗員計1430人が亡くなる海難事故が発生したことから洞爺丸台風の通称で知られる。幌加辺りでも暴風が吹き荒れ大量の倒木が発生したらしい。その後の経緯は”NPOひがし大雪アーチ橋友の会”が幌加駅跡に設置した解説板から引用したい。
『昭和29年の洞爺丸台風により幌加周辺に大量の風倒木が発生、その処理に多くの造材人夫が入り、住宅・商店・飲食店・事業所などが建設されました。
昭和37年頃の幌加は約80軒の建物があり、350人位の人が住んで賑やかな町を形成していました。しかし風倒木の処理が終わると、人は次第に消えていきました。
昭和53年、糠平駅~十勝三股駅間、18.6kmの列車運行が廃止され、バスによる代行輸送に変わり、幌加の駅としての役割は終わりました。』
昭和45年(1970)荷物取扱いの廃止と共に無人化。同53年(1978)マイクロバスの代行輸送になり列車がやって来なくなってから9年後の昭和62年(1987)、士幌線全線廃止により幌加駅は正式に廃駅となる。それから36年を経た現在、駅跡にはホームや線路を残しているが、かつての市街は完全に消滅し自然に帰している。

空中写真データ:国土地理院 十勝岳 整理番号CHO7731-C7D-20を基に作成。
昭和52年(1977)9月撮影、幌加駅周辺の空中写真。糠平駅~十勝三股駅間がマイクロバス運行に転換される1年3ヶ月前で、1日4往復の列車が運行されていた。北側に営林署の貯木場跡があり専用線跡の路盤が確認でき、駅前には数軒の建物が残っている。

「上士幌町地域の宝さがしの会」作成、昭和42年(1967)の幌加市街の地図。

糠平駅跡から幌加駅跡へ向かう途次、国道273号沿いの三の沢駐車場にトロッコを掲げるワゴン車が目に留まり、寄り道することに。

糠平駅から幌加駅方面へ約2.6km地点、旧士幌線の三の沢橋梁。長さ40.4m、昭和30年(1955)完成。

三の沢橋梁より糠平湖を望む。かつては車窓から眺める風景だった。

国道より三の沢橋梁。

ワゴン車に掲げられていたトロッコはここの目印、森のトロッコ鉄道エコレールの乗り場があった。

士幌線跡を利用し手作りで約500mの鉄路を敷設したとのこと。今年(2023)で開業20周年だという。この足こぎトロッコに乗って往復1kmの士幌線を体感してみよう。

乗車場から約500m地点にある転車台。ここでトロッコを回転させて復路に。

長さ3mの第二・四の沢橋梁を通過するところ。

乗降場に戻ってきたところで記念撮影。

三の沢橋梁から幌加方面へ約2.4km、五の沢橋梁が残っている。長さ5m、昭和30年(1955)完成。

五の沢近くの国道沿いにある五ノ沢バス停留所(旭川方面)。1日に帯広駅前バスターミナル発のノースライナーみくに号が16:28に発着するだけ。周辺に人家が無くどういった客が利用するのだろう。旭川駅前発のみくに号がここに12:49着なので、旭川から観光客利用がわずかにあるのかもしれない。

五ノ沢バス停留所から国道273号を約1.4km北上、タウシュベツ展望台に。

木々の合間にタウシュベツ川橋梁を望む。

タウシュベツ川橋梁は昭和12年(1937)士幌線(糠平~幌加間)に完成した全長130mの橋梁。同14年(1939)士幌線は途中に幌加駅を設けて十勝三股駅まで延伸開通、ここを蒸気機関車に牽引される列車が走り始める。

それから16年後の同30年(1955)糠平ダムの建設工事に伴って清水谷~幌加間の線路が付け替えられ、タウシュベツ川橋梁は廃橋となるもそのままの姿で取り残された。糠平湖の水位変動によって見え隠れする”幻の橋”として今では観光名所となっている。

タウシュベツ展望台付近に残る士幌線跡の路盤(糠平方面)。

同場所より士幌線跡の路盤(十勝三股方面)。

そして幌加駅跡に。

「幌加駅の変遷」と題した解説板。訪れた人にとって往時を知れる解説板は有難い。北海道の廃駅全部に設置できないものだろうか。

撮影時期が不明だが往時の幌加駅。線路左側に駅舎とホームが見え、右手は蔦井木材幌加木工場なのだろう。

上写真と同アングルで撮影。線路とホームだけが残り駅舎や右手の木工場は消滅している。

ホーム手前の左側が駅舎跡。今は消失し草生しているが建物の基礎だけは残っているのかもしれない。

幌加駅構内跡より糠平方面。

ホームには復元された駅名標を立てている。

幌加駅構内跡より十勝三股方面。

草生しているが貨物用のホームも残されている。

駅名標の右奥が駅舎跡。

駅舎跡より駅前通り。幌加図によれば左手に鵜沢儀平家やガソリンスタンド、右手に日通の幌加営業所があったはず。

幌加駅周辺は無人地帯となっているが、駅北側に北海道開発局の幌加除雪ステーションが設けられている。その裏手に士幌線の路盤が残り幌加駅跡へ続いている。
今から11年前の2012年8月22日、タウシュベツ川橋梁や幌加駅跡の様子を。

三の沢橋梁。

森のトロッコ鉄道エコレール。11年前に訪れたこの時には乗車していない。

五の沢橋梁。

タウシュベツ川橋梁は糠平湖の水位が高く橋桁がほぼ水没している。

最後に幌加駅跡。解説板がまだ新しい。
訪問日:2023年8月14日(月)、2012年8月22日(水)

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