

脇本陣跡の隣には見事な酒林を掲げ、なまこ壁の土蔵が美しい造り酒屋。信州地酒「笑亀」の醸造元・笑亀酒造である。少し先へ進み、歩道橋の下で右折して国道を離れると、すぐ右手に小竹屋というたばこ店があるのだが、宿場時代からの屋号であろうか。旧街道の旅をしていると、このような○○屋といういかにも老舗な名前を見かけることも多く、想像を掻き立てられ楽しい。話がそれたが、この右折地点がかつての鉤の手(枡形)で、小竹屋の向かい側にそれを示す標柱が立てられている。ということは、ここら辺で塩尻宿は終わりとなる。

宿場を抜ければ鬱蒼と樹林に囲まれた阿礼神社が静かに鎮座している。素盞鳴命・大巳貴命・誉田別命の三神を祀るこの神社は、延暦年間(728~806年)征夷大将軍・坂上田村麻呂が蝦夷征伐の折、戦勝祈願に参拝したと伝わり、また治承四年(1180年)には平家追討のため挙兵した木曽義仲が参拝したという。古代から武運長久の神として崇拝された由緒ある古社なのである。現在の社殿は寛保3年(1743年)に再建されたもので、復元して献納されたひょうきん顔の狛犬がこの神社を守っている。毎年7月には例大祭(塩尻祭り)が行われ、各地区から山車が曳行されると祭りのボルテージは最高潮に達し、見物客も含めた一体感で大いに盛り上がるという。

旧道は阿礼神社前で左に曲がると、塩尻東小学校前を通過して堀ノ内集落へと入って行く。すると旧堀ノ内村の名主宅であった堀内家住宅が現れる。国重要文化財にも指定されるこの民家は江戸時代中期の建築で、切妻屋根の棟飾りに雀おどりの装飾を持つ、この地方特有の力強い外観の本棟造り。そんな中にも石置板葺屋根に質素な部分も所々に見せ実に味わい深い。堀内家住宅から静かな旧道を歩くのであるが、間もなく大小屋交差点で喧騒の国道と再び合流する。交差点の路傍には庚申塔や道祖神等の石造物群が並び、時代の変遷を思うかのようにひっそりと行き交う車を見つめている。
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